反ユダヤ主義(15年前の記事から)

ここ数年、「反ユダヤ主義の蔓延は第二次大戦以来最悪だ」とする声が欧米のメディアで聞かれるようになり、それを裏付ける事件も多発しています。

ユダヤ人と接する機会が少ない日本でも、根拠のない反ユダヤ主義的言論がこれまで無かったとは言えません。それらは概して、日本人が「ユダヤ人陰謀説」に魅せられやすいという傾向と無関係ではなかったと思います。

9・11の連続テロ多発事件の後の日本では、アメリカでネオコンと呼ばれたグループとユダヤ人を結びつける論評が多くみられました。

当時そのことに違和感を持った私は、数人の著名なユダヤ人の支援を得て、記事を書いたことがありました。もう15年以上前の内容ですが、国連の反イスラエル姿勢など、その後も全く解決されていません。また、これらのユダヤ人指導者たちが、一日本人の質問に誠意をもって答えてくれたことに、改めて感激します。

これからも機会を見つけて、ユダヤ人やイスラエルへの理解促進にささやかでも貢献していきたいと思います。

ユダヤ人の歴史

1984年、4歳と3歳の子供を育てながらシカゴの大学に通っていた頃、公共テレビ PBSが放映した「Heritage: Civilization and the Jews」という9時間のドキュメンタリーを観たことがあります。聖書の時代から中世、近代、そしてホロコーストの悲劇を経てイスラエル建国に至るユダヤ人の歴史が、同時に人類全体の文明にどのような影響を与えたのかを、豊富な写真や興味深い資料で織りなした一大絵巻とも言うべき内容でした。シリーズを通して語り部を演じたのは、建国間もないイスラエルの国連大使、駐米大使、後に教育文化大臣、外務大臣を務めたアバ・イバン氏で、ケンブリッジ大学卒の学者であった彼の語り口は、簡潔で分かりやすい英語でありながら、格調の高いものでした。

このシリーズは当時5千万人以上が観たとされ、エミー賞やピーボディ賞などを受けました。私自身も深く印象付けられ、コンパニオンブックとして出た同名の著書を買い、折に触れて読んだものです。

その後10年ほどしてロサンゼルスに引っ越し、その地のユダヤ人指導者の数人と親しくなりました。その中の一人で、日露戦争時、日本に資金援助をしたジェーコブ・シフなどが設立した歴史あるユダヤ人団体 American Jewish Committee の西部地区代表ニール・サンドバーグ博士と、このドキュメンタリーの話をしたことがあります。そしてサンドバーグ博士が、日本人のユダヤ人理解を助けたいと、このドキュメンタリーをNHKで放映して貰うためにずいぶん努力したが結局実現しなかったことを、知りました。反ユダヤ的本がベストセラーになり、ホロコースト否定の記事さえ出る日本でこそ、このドキュメンタリーが放映されて欲しいと思っていた私も、その話を聞いてがっかりしたことを覚えています。

それからさらに20年以上が過ぎ、 今では「Heritage: Civilization and the Jews」の全編が Youtube で観られるようになりました。
(以下は第1話ですが、第2話以下もYoutube で検索可能です。)

つい最近では、サイモン・ウィーゼンタール・センターがユネスコと共同で制作したパネル展示「「民、聖書、その発祥の地:ユダヤ人と聖地の3500年にわたる繋がり 」が、東京で開かれました。着任したばかりのイスラエル大使ヤッファ・ベンアリ氏や松浦晃一郎 元ユネスコ事務局長、数人の国会議員も挨拶し、日本とイスラエルの間の理解を深めるこのような教育啓蒙活動の大切さを訴えました。

          
ヤッファ・ベンアリ大使      松浦氏・中山泰秀議員・クーパー師

特筆すべきは、この展示もPBS のドキュメンタリーも、イスラム教の誕生、それがやがて中東全域・北アフリカまで広まり豊かな文化を生み出したこと、その間ユダヤ人が身分は劣位であっても自らの宗教に従って生きることを許されていた歴史を、正確に伝えていることです。

一方、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長はつい先ごろ、中央委員会の演説で、「イスラエルは植民地プロジェクトであり、ユダヤ人とは何の関係もない」と宣言しました。それ以前にも、パレスチナは国連やユネスコに、ユダヤ人と聖地エルサレムの歴史的繋がりを否定し、イスラエル国家の正当性に挑戦する決議案を通させることに、成功しています。これらの決議案の幾つかに日本も賛成票を投じていることが、残念です。

パレスチナ側がイスラエル国家の存在を認めていないこと、ガザを統治するハマスがイスラエルの壊滅を目指す憲章を掲げていることも、日本ではあまり知られていません。

日本政府は最近、和平交渉の仲介役になる用意があることを表明しましたが、古代からの長い歴史と、イスラエル建国後の近代の歴史を正確に踏まえ、誠意ある建設的な役割を果たしてほしいと願います。

コーシャフード

”コーシャ”という言葉を初めて聞いたのは、アメリカに行って間もなく、大学に行き始めた時でした。授業の英語についていくのもおぼつかない頃、誰かがクラスで「Everything is Kosher」と言ったのです。前後の文脈から「全て問題ないよ。」というような意味と理解したのですが、コーシャの本当の意味を知るのはずっと後になってからでした。

その後何年もして、ホロコーストに関するインタビュー集『忘れない勇気』を書く過程で、多くのユダヤ人と親しくなりました。彼らの全員ではありませんでしたが、オーソドックスと呼ばれる人々は、ユダヤ教の決まりを厳格に守り、食事にも多くの制限があることを知りました。食材の種類だけでなく、料理に使う器具も、料理法も全てコーシャでなければならないと聞いて、驚いたのを覚えています。

1997年に本が出版された後、それを支援してくれたサイモン・ウィーゼンタール・センター副所長のエブラハム・クーパー師が日本に来てくれましたが、当時は東京に厳格にコーシャを守るレストランが無くて、彼は食べ物持参の来日でした。今は、高輪に純粋なコーシャレストランChana’s Placeがあるので、クーパー師と安心して食事ができます。

私は3年前に生まれ故郷の仙台に戻ってきましたが、何とそこに、コーシャフードについて大変詳しく、日本の食品会社にコーシャ認定の取り方をアドバイスしている人物がいたのです。(株)ヤマミズラ の門傳章弘社長です。会社のホームページには、コーシャフードについて、大変分かり易い説明が掲載されています。


コーシャ食品をご存知ですか?
コーシャとはもともとは、紀元前の旧約聖書の教えに即した、カシュルートと呼ばれる厳格な「食事規定」がその語源。「コーシャ」とはこの食事規定で「食べて良い食物」のことを意味します。製品の原材料から製造過程まで厳しくチェックされるコーシャ。その判断基準が細かく厳格がゆえに、品質の安全性に信頼が出来るのです。

食べていけない肉類の条件は?
 コーシャで食べて良い肉類は、基本的に草食動物であり且つ反芻動物(胃を二つ以上持つ動物)であることが条件になります。(牛、羊・・・・○ 豚、ウサギ・・・・×)さらに、完全に血抜きされた一定の食肉処理を施された肉のみ食することが出来ます。肉の血液は悪い菌を体内に運ぶと言われており、衛生上理にかなった規定といえます。

魚介類は食べてもいいの?

海や川・湖に住む生き物で、ヒレやウロコのあるものは食べても良いとされていますが、エビや蟹などの甲殻類貝類・たこ・イカなどは食べられません。ウロコが目立たないウナギも食べられません。

コーシャってどうしてそんなに厳しいの?
牛肉と乳製品の”食べ合わせ”を禁じたり、動物性油を禁じたり調理器具や製造過程にも厳しい規定があります。それは厳しい砂漠地帯を生き抜く民族の知恵だったのかもしれません。現代の食生活にも誠実に古の知恵を守るコーシャだからこそ衛生的で、健康的な食品として世界から信頼を得ているのです。

どのような製品がコーシャ認定を必要とするの?
コーシャはあらゆる分野で必要とされています。

・食品全般とその他の関連品
(魚、スナック、オーブン料理など)
・食品工場での原材料
(全ての食用油、大豆に由来する全ての商品、着色料を含む食品など)
・製薬、医療関係
(ビタミン剤、ホメオパシー薬、薬局販売の医療品など)
・ベビーフード関係
(ミルク代用品など)
・化粧品など
・衛生用品、洗剤、掃除用品


認定団体に関しても、詳しい説明があります。

食品がコーシャであると認定する団体は世界に何百もありますが、[OU(Orthodox Union=ニューヨーク本部)]、[OK(Organized Kashrut=ニューヨーク本部)]、[KLBD(Kosher London Beth Din=ロンドン本部)]の3団体が質・規模ともにコーシャ認証で最も権威のある団体です。

この3団体はSuper Kosherと呼ばれ、古くから伝統とルールを守り、清潔、安全、衛生的というコーシャの概念を常に追求しており、認証に携わるラビ(宗教指導者)は化学、薬品、食品などの各分野でのエキスパートです。またこれらの団体では膨大な原材料データをもとに何百人というスタッフが世界中で活躍しています。

ヤマミズラ社はOUとKLBDの日本代理店として、日本の食品会社にコーシャ認定に関するアドバイスをしています。世界の多くの有名食品会社が自社製品にコーシャ認定を受けていますが、最近は日本でも、酒造会社などが積極的に認定を受けるようになってきたそうです。

ヤマミズラ社のカタログから

門傳社長は、歴代のイスラエル大使やヘブライ大学関係者とも親しく、食の文化を通して、日本人とユダヤ人、そしてイスラエルとの交流が深まることを願っているそうです。

門傳社長に、お話を伺いました。

どのような経緯からユダヤ人やイスラエルと付き合うことになったのですか?

70年代に、日本ユダヤ教団でラビを務めておられたマーヴィン・トケイヤー師に出会ったのが、きっかけです。師は、日本の文化や神社などにも大変関心を持たれていて、一緒にいろいろ勉強しました。その後、ヘブライ大学のベン=アミー・シロニー教授も紹介して頂き、仙台周辺の温泉にご案内したりしました。ヘブライ大学から日本研究者が来日した時は、講演をアレンジするお手伝いもしました。

最初はビジネスの関係ではなかったのですね。

違います。日本でアインシュタイン展を開く手伝いをしたりするうちに、イスラエルに信頼できる知り合いが増え、私も信頼して貰えて、それが今のビジネスに結びび着きました。でも、日本とイスラエルの友好に貢献したいという思いは変わらず、今でも、ヘブライ大学で日本語を学ぶ大学生を日本に呼ぶ奨学金を出しています。昨年は、アラブ系イスラエル人学生とユダヤ系イスラエル人学生一人ずつに、奨学金を出しました。

素晴らしいですね。それらの若者がきっと将来、日本とイスラエルの間の友好と理解を深めてくれるでしょう。有難うございました。

 

エルサレムストーンを埋め込んだヤマミズラ社の応接室で

ユネスコ世界遺産会議へのメッセージ

ユネスコに向けてサイモン・ウィーゼンタール・ センターの声明
―ヘブロン保護の決議より、モスルにおけるISISのモスク破壊の批難を―

パレスチナ自治政府は、ユネスコに対して、ヘブロンにあるマクペラの洞穴をイスラエルから保護するよう要求しています。しかしこれはユダヤの歴史を否定し、イスラム化しようとする行動ではないでしょうか。

「今年は1967年の6日戦争(第三次中東戦争)から50年を記念する年です。また、50年前にユダヤ人が19年ぶりに初めてイスラエル・ベツレヘム・ヘブロンの聖なる地を訪れることができた年であり、同時に、イスラエルがユダヤ教徒・キリスト教徒・ムスリム教徒とっての聖地を保護してきて50年という記念すべき年でもあります」とエブラハム・クーパー師は語ります。

「ポーランドのクラカウで行われるユネスコ世界遺産会議にて、条約締約国21カ国はパレスチナのヘブロン保護の決議を含む34の案件について審議すると思います。しかし、先日ISISによって破壊されたモスルにあるモスクの保護については話されないでしょう。アラブ連盟やイスラム協力機構は、イスラエルがヘブロンにあるマクペラの洞穴をテロから保護しているという“罪”より、モスクを含む聖地を破壊し続けているという“罪”で ISISを批難するべきではないでしょうか」と主張します。

サイモン・ウィーゼンタール・ センターの代表として同センターの国際関係担当のシモン・サミュエル氏がクラカウでのユネスコ世界遺産会議に出席する予定です。

(補足)
マクペラの洞穴・・・パレスチナ自治区のヘブロンにあり、アブラハムなどの聖人が埋葬されておりユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒から神聖視されている宗教史跡。イスラエル政府は、2010年から同聖地の修復・保護に取り組んでいます。

パレスチナとユネスコ・・・パレスチナは2009年にユネスコに参加して以来、マクペラの洞穴や嘆きの壁をイスラムの遺産として認められるよう政策に取り組んできました。

2016年にはユネスコは、ユダヤ人と嘆きの壁など数か所の聖地の歴史的つながりを否定する決議を採択しました。(賛成24国、反対6国、棄権26国で、米、英、独、オランダ、リトアニア、エストニアが反対し、日本は棄権)。7月2日からポーランドのクラカウで開かれるユネスコ世界遺産会議でも、イスラムのマクペラの洞穴として、保護の決議が審議される予定です。

                  (日本語訳・補足説明:杉中亮星)

サイモン・ウィーゼンタール・センター、米大使館エルサレム移転の遅れに失望

2017年6月2日

サイモン・ウィーゼンタール・センター
大使館のエルサレム移転を遅らせるトランプ大統領の決定に深く失望

ユダヤ人の歴史的首都全域に対するイスラエルの統治権に、交渉の余地はありません。過去50年の歴史は、それのみが、聖地における全ての宗教の自由を保証する道であることを示しています。。

「サイモン・ウィーゼンタール・センターは、大使館のエルサレム移転を遅らせるというトランプ大統領の決定に、深く失望しました。トランプ政権は、イスラエル首相が誰であろうが、彼が決してエルサレムの統治権を譲り渡すことはないと、認識しているはずです。エルサレムは分断することのできないイスラエルの首都であり、将来もそうあり続けるでしょう。」著名なユダヤ系人権擁護非営利団体であるサイモン・ウィーゼンタール・センターの館長マーヴィン・ハイヤー師と副館長のエブラハム・クーパー師はそう発言しました。

「私たちは、大統領補佐官が、トランプ氏は今でも、1948年以来アメリカが冒してきた歴史的過ち ――イスラエルが自国の首都を統治する権利を認めない―― を正すつもりでいると強調したことを、心に留めます。」

「来週は1967年の六日戦争から50周年ですが、それは、旧市街地にある全ての宗教の聖地をその信者が自由に訪ねることのできる半世紀でした。それは、アブラハムの伝統を受け継ぐユダヤ教、キリスト教、イスラム教の宗教指導者によって等しく認められ、祝福されるべき事実です。」

「忘れっぽい世界に、思い起こして欲しいのです。いかなる形であれ、エルサレムが再び分断されるようなことになれば、何が起こるのかを。1948年、ヨルダン軍はユダヤ人地区とそのすべてのシナゴーグを破壊しました。彼らは、オリーブ山の(ユダヤ人の)墓石を便所に使い、ユダヤ人が嘆きの壁を訪れることを一切禁止しました。ユダヤ人は、彼らにとって最も神聖な地を、二度と外部の政治・宗教集団に支配させることありません。」

ハイヤー師とクーパー師は、こう結論付けました。

「世界の主要国、バチカン、そしてイスラエルのアラブ隣国が、この紛うことなき事実を一日も早く理解すればするほど、真の平和と和解が達成される日が近づくのです。」

注: 日本の報道では、イスラエルのエルサレム併合が違法とされてきたことが強調されますが、六日戦争でイスラエルが占領するまで、エルサレムがヨルダンによって違法に占拠されてきたことはあまり伝えられません。因みに、六日戦争は、エジプト・シリア・ヨルダンからの差し迫った攻撃に対する、イスラエルによる防衛の戦争とされています。アメリカのニッキー・ヘイリー国連大使が着任に際し、「国連での不当なイスラエル叩きの日々は終わった」と宣言したことも踏まえ、エルサレムの問題も、歴史的背景も含めて深く学ぶ必要があると思います。