日本は中東で果たす重要な役割を明確に

エブラハム・クーパー師
テッド・ゴーバー博士

     

日本は過去25年にわたり、中東で重要な役割を果たしてきたが、それは主に、ヨルダン川西岸地区とガザに住むパレスチナ人の経済・社会発展への支援を通して、なされてきた。

日本が1993年以来、公衆衛生・経済成長・農業・教育・難民支援などのプロジェクトを通してパレスチナに貢献してきた額は1700億円にものぼる。これらの重要な支援活動は、20年余にわたり多くのパレスチナ人の生活の質を向上させることを助けてきた。

それに加えてこの数年は安倍晋三首相の指導と率先の下、日本の経済的・地政学的活動は飛躍的に拡大し、それは日本とイスラエル両国の安全保障と経済利益に寄与してきた。安倍首相のヤド・ヴァシェム国立ホロコースト記念館での歴史的スピーチも、世界のユダヤ人コミュニティーと日本の間の信頼レベルを高めることを助け、中東におけるさらに大きく、かつバランスのとれた日本の役割への、期待を膨らませた。

しかし、安倍首相が近年ベンジャミン・ネタニヤフ首相に示した友好姿勢が歓迎すべきものである一方、それは、国連における日本の対イスラエル公式ポリシーとは、鋭く対立するものである。入植地、境界線論争、今も続くガザでの対立などの幾つかの問題における日本の公けの外交姿勢は、日本ともイスラエルとも価値観を共有しない政権の姿勢に、より近いものである。

安倍首相のイスラエルへのポジティブな取り組みと、日本外務省のイスラエルに対する近視眼的で時には攻撃的でさえある政治的姿勢の、際立った違いには困惑させられる。外務省は、安倍首相のユダヤ人国家イスラエルに対する新しい前向きな取り組みに関して、首相官邸からまだ説明を受けていないのだと考える者がいても、責められないだろう。

外務省のイスラエルに関する立場は、日本とイスラエルが共に民主・自由市場経済国家として、利益と価値を共有している事実と、相容れないと気づくことも重要である。例えば、発展しつつある両国の商業関係を見てみよう。最初は低調なところからスタートしたが、近年は、日本とイスラエル企業間、特にハイテク、サイバーセキュリティー、健康・観光分野での関係は大きく開花している。

共通の脅威と敵対国に対峙している日本とイスラエルは、地政学的利害も共有している。北朝鮮による日本人拉致の犯罪と、日本領空を越えるミサイル発射は広く知られているが、ピョンヤンはまた、何十年にもわたり多くの方法でイスラエルに対抗してきた。

これらの地政学上そして安全保障上の現実を鑑みる時、日本の外務省が、敵対する隣国とテロ組織に囲まれた独立国家イスラエルが日々受けている挑戦を、あまりにも頻繁に無視することに、憂慮を覚える。

日本政府は、イスラエルが置かれた危険な地政学的状況と、今この地域で起こりつつある大きな変化を理解する立場にあるべきだと思える。例えば日本は、イスラエルが自国領土の一部とみなすゴラン高原を、係争中の地域ではなく、シリアのアサド大統領のものとみなし続けるべきなのだろうか。

日本の外交官が国連人権理事会において、国際的に認められた国境を自国の平和なコミュニティを狙うテロ襲撃から守ろうとするイスラエルを糾弾することは、正しいのだろうか?日本は、国連人権理事会の前身である国連人権委員会で1996年に慰安婦問題に関して提言をした報告者を直ちに退け、つい最近の2014年に至るも彼女の報告を書き変えさせようとした。しかし日本は、国際的に認められた国境を防衛しようとするイスラエルには、何としても抗議せざるを得ないと感じたという。

そうは言っても日本の外務省は結局、自国の領地と領海 ― 韓国と領有権を争う独島/竹島、中国との釣魚島/尖閣島、ロシアとの南クリル/北方領土など ― が侵されてはならないことに関しては、正しく信じている。日本の指導者は、中国とロシアの爆撃機が頻繁に日本の領空に侵入したり、中国の潜水艦が沖縄近海に入ってくることも、当然憂慮している。

外務省の国連におけるイスラエルに対する相も変らぬ姿勢は、日本の納税者に害を及ぼしていることも知られなければならない。

日本政府の何十年にもわたる寛大な国際支援は称賛されるべきだが、この3月に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に拠出された23億5千万の支援金は、ハマスにコントロールされた教師が、パレスチナの子供たちに殉教(テロ行為)を称え、教科書にはイスラエルの地図さえ全く無いカリキュラムを用いて教育してきたと伝えられる組織に、流れているのだ。

日本の人々は、世界中の平和を支援し続けるにあたってさえ、彼らの施しの受領者の中には、ハマスのように、日本人の価値観を共有していない者もいることに気づかなければならない。

外務省は、安倍首相がイスラエルと成し遂げた画期的な成果をさらに積み上げ、日本がこれまで出遅れた分を追いつかなければならない。日本とイスラエルの人々をより近づけるため、安倍首相は懸命にそして勇気をもって立派な仕事をしてきたが、イスラエル国家に対する不公平で、時代遅れで、最終的には日本のビジネスの機会(ユダヤ人とアラブ人が共に利益を得るエルサレムの巨大プロジェクトへの著名日本企業の入札を含む)を損ねるネガティブな政治姿勢を持つ外務省は、安倍政権の何の役にも立っていない。

友好国とパートナーの間では意見の違いと政策の違いは必然的に起こるものだが、今こそ日本の外務省が、安倍首相のリードに従い、イスラエルとその隣国に対するもっと実践的で公平なアプローチを採用すべき時が来ている。

*エブラハム・クーパー師はサイモン・ウィーゼンタール・センター副館長
*テッド・ゴーバー博士はサイモン・ウィーゼンタール・センターのアドバイザー

オリジナルは Asia Times 7月29日掲載        (日本語訳:徳留絹枝)

Algemeiner  7月30日掲載版には、以下の点も付け加えられました。

― 北朝鮮が1973年の第4次中東戦争時、反イスラエル国側に航空機と人員を提供したこと。シリア・イランなどのイスラエル敵国に、武器、化学・生物兵器、核兵器技術を売ったこと。

― 日本の人々にとって平和・遊び・美のシンボルである凧が 今回はハマスのテロ行為に使われたこと。パレスチナの若者が火炎物を取り付けて飛ばした凧は、イスラエル南部三か所の森林を破壊し、5千エーカーを焼き尽くした。

建国70周年を迎えたイスラエルの理解を

安倍首相は建国70周年を迎えたイスラエルを訪問し、同時にパレスチナ自治区も訪れ、日本の中立的立場を明確に示したうえで、イスラエルとパレスチナ双方に和平を働き掛けるという。

「中立的立場」という言葉は聞こえがよく、公平な立場という印象を与える。しかしそれは、双方のこれまでの行動や発言、さらには国際社会の新しい流れなどを深く理解したうえでの「中立」なのだろうか?

イスラエルは、ここ数年の日本との経済関係の拡大、日本を訪れるイスラエル人観光客の増加などが示すように、日本にとって身近な国になりつつある。しかし、かつてのアラブ産油国によるイスラエルボイコットの記憶や、日本の一部に根強いユダヤ人への偏見もあり、日本人のイスラエル理解は決して十分とは言えない。イスラエル・パレスチナ問題にしても、日本の報道にはパレスチナ寄りの傾向があり、イスラエル側の主張はあまり日本に伝わっていないのが現状だ。

日本での報道には、イスラエルがパレスチナ人の土地を占領し、パレスチナ人を抑圧しているという構図が先ずある。それに抗議するパレスチナ人をイスラエル軍が過剰な力で制圧している、という報道が一般的なものだ。しかし、それらの抗議をハマスなどの指導者が扇動していること、今回のガザのデモでは暴動化すれば死者がでることも承知で女子や子供まで駆り立ていたことなどは、あまり伝えられない。何より、これらの子供が、イスラエルやユダヤ人への憎しみを植え付け、自爆テロを賛美する教育を受けて育っていることも、日本では問題にされない。

トランプ大統領が、「国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)」に対する拠出金の支払いを留保したニュースも、彼のエルサレム首都認定に反発したパレスチナへの報復措置として報道された。そして、最大の支援国アメリカからの拠出金が凍結されたことで、パレスチナ難民への食糧、医療、教育支援などの支援活動に支障をきたし、彼らの窮状がさらに悲惨になることが強調された。しかしそれらの報道は、UNRWAが運営する学校が子供たちにイスラエルとユダヤ人への憎悪を教えていることには触れないし、国際社会からの援助資金や資材が、テロ攻撃用のトンネル建設などに流用されていることも、日本ではあまり報道されない。

また日本人の国連信望からか、UNRWA自体の問題点もめったに語られない。イスラエルの独立戦争(実際は国連のパレスチナ分割決議を拒絶したアラブ諸国が誕生したばかりのイスラエルに攻め込んだ)で発生したパレスチナ難民を救済するという短期目的で1949年にUNRWAが設立されたが、難民数は当初の約70万人から現在は500万人に膨れ上がり、UNRWAの支援で暮らしている。そして主要国からの巨額の寄付で賄われる経費の使われ方は、不透明性が度々指摘されている。

70年を経て、なぜ子供や孫の代まで難民であり続なければならないのかを解説する日本の報道はあまりない。そして、同じ時期にアラブ諸国から追放されたほぼ同数のユダヤ人難民を建国直後の貧しいイスラエルが吸収し、その中から国の発展に尽くした多くの人材が輩出されたことも日本ではあまり知られていない。20世紀においては2回の世界大戦をはじめ、多くの人々が戦禍にさらされたが、日本人を含めそのほとんどは苦難を乗り越え、何とか建設的に生きてきた。しかしパレスチナに限り、3代目に至るもまだ難民でいることの原因は何なのか。イスラエルが何度か提供した和平案を受け入れ、テロ行為に費やされる人的資源や国際社会からの支援を、健全な国家の建国に役立てることこそが求められていたのではないか。2005年にイスラエル軍が撤退した時、ガザは中東のシンガポールになれたはずなのに、ハマスが選んだのはイスラエルへのロケット攻撃で、その後もテロ活動は続いた。因みに、パレスチナ政府は、イスラエル人に対するテロ活動に関わった者(死んだ場合はその遺族)に、生涯にわたって給料を支払っており、その年度総額はアメリカ政府が毎年支給してきた支援金300億円とほぼ同額になると報告されている。アメリカ議会は最近、そのような用途に使われる支援を停止する法案を通過させた。

また日本では、イスラエルのボイコットを目指すBDS(ボイコット・投資引き上げ・制裁)運動も、あまり知られていない。この運動は、イスラエルの占領地からの撤退とパレスチナ人の人権擁護を目的としてパレスチナ人活動家が2005年に始めたものだ。南アフリカのアパルトヘイトを終焉させた運動をモデルにしたとし、イスラエルとビジネスや学術・文化交流をしようとする企業やグループに圧力をかける。最近では、ホンダがヨルダン川西岸地区で予定していたモーターバイクのレースを中止したが、BDS活動家は、「パレスチナ人の人権を侵害するイスラエルの責任を問う世界的BDS運動の成果」として歓迎した。

日本政府は、BDS運動に関して正式な立場はとっていないが、イスラエルや米国政府そして多くのユダヤ人団体は、イスラエル国家そのものの違法性を訴えることが運動の真の目的だとして、糾弾している。米国ユダヤ人協会(AJC)理事長で、毎年訪日して安倍首相にも面会しているデビッド・ハリス氏は、次のように私に書いてきた。

「表面的にどのような目的を掲げようと、BDS運動は本質的に反ユダヤであり、中東で唯一の民主国家であるユダヤ人国家イスラエルのみをターゲットとし、その壊滅を目指すものです。BDS運動に加わる企業には、以下のことを考えて欲しいです。第一にそれは反ユダヤ反イスラエル運動への参加だということ、次に、多くの州が反BDS法を成立させたアメリカ国内においてその企業の評判は著しく傷つくこと、最後にその企業は、サイバーセキュリティや未来自動車、先端医療や水処理などイスラエルの最先端技術へのアクセスを失う、ということです。」

「イスラエルの壊滅」というのはユダヤ人側の誇張ではない。ガザを実効支配するハマスの憲章は長い間それを謳ってきており、昨年その文言そのものは削除したものの、「(ヨルダン)川から(地中)海までパレスチナの地を開放する(すなわちイスラエルの壊滅)」という姿勢に変わりはない。テロ行為への過剰な対応や西岸での入植活動など、イスラエル側にも問題とされる行動はあるが、基本的問題は、パレスチナがユダヤ人国家としてのイスラエルを認めない、という一点にある。日本が「中立」という政策を取るにしても、この状況を正確に把握したうえで、国民にも説明できるような政策であってほしい。また、ニュースメディアも、国民が判断できるよう、可能な限りの情報を正確に伝えるべきだと思う。

また国際社会の新しい流れにも、目を向ける必要があるのではないか。トランプ大統領のエルサレム首都宣言、それに対して大きな抗議活動を起こすこともなかった湾岸諸国の動向、サウジアラビアの宗教指導者が初めてホロコースト否定を糾弾する声明を発表したこと、続いて同国のムハンマド皇太子がアラブ指導者として初めて ”ユダヤ人が祖先の地に住む権利” を認めたこと、米国務省の最新報告書がヨルダン川西岸やガザを占領地と表記しなかったことなど、十年一日の「中立」政策でよいのかと思わせられる展開が続いているからだ。

朝鮮半島で大きな動きが起きているように、中東でもそれは起きている。経済関係の深まりとともに、人的交流も益々増えていくであろうイスラエルに、日本はどのようなアプローチをすべきなのか。中立と宣言するのは簡単なことだが、それでは真の理解に繋がらない。建国70周年という節目に、日本人は先ず、イスラエルの歴史(特に建国の歴史)をもっと学ぶことが必要なのではないか。国連決議がイスラエルを非難してきたという事実のみを真に受けず、アラブ・イスラム国が数を頼みに「シオニズムは人種差別の一形態である」と宣言する決議を採択したのも、今でも総会やユネスコで反イスラエル決議を採択しているのも、国連であることを理解しなければならない。東エルサレムを含む西岸地域は「占領地」と呼ぶよりも「係争中の地域」と呼ぶのが国際法上正しいという説もある。歴史を正確に知ることはなによりも重要なのだ。

筆者は最近、日本でも邦訳が出た『イスラエル―民族復活の歴史 』の著者で、イスラエルのシャーレム大学副学長ダニエル・ゴーディス氏とメールを交換した。ゴーディス氏は米国とイスラエルの主要新聞に頻繁に執筆しており、発言力も大きい人物だ。公平な立場から簡潔に纏められたこの著書は、指導層への批判が許されないパレスチナと違い、自国政策への批判が世界で最も自由に時には激しく行われるイスラエルで、良書として認められた。そして、米国で最古のユダヤ関連書籍紹介団体から、2016年度最優秀書に選ばれている。

  

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ゴーディス氏が私に送ってきた言葉には、イスラエルをもっと知って欲しいという願いがあふれていた。

「日本の長い歴史や文化を理解することなく、日本政府や日本国民の行動を理解することはできないでしょう。イスラエルも同じです。日本の方々には、日々の新聞の見出しを追うだけでなく、ユダヤ人の長い歴史と遺産、そして(祖先の地に帰るという)シオニズムが何千年にもわたるユダヤ人の夢と切望であったことを、理解してほしいと思います。」

私が個人的に知るユダヤ系の人々は、誰一人反パレスチナではない。彼らの全員が、パレスチナの人々に真の平和と健全な暮らしをもたらすために尽力するパレスチナ人指導者が現れて欲しいと、口を揃える。一方パレスチナ支援活動を続ける日本人の努力も尊いものだ。イスラエル・パレスチナ問題に関し、歴史を学び、正確な情報を得て、平和構築に貢献できるような日本であってほしい。

徳留絹枝

ユダヤ人の歴史

1984年、4歳と3歳の子供を育てながらシカゴの大学に通っていた頃、公共テレビ PBSが放映した「Heritage: Civilization and the Jews」という9時間のドキュメンタリーを観たことがあります。聖書の時代から中世、近代、そしてホロコーストの悲劇を経てイスラエル建国に至るユダヤ人の歴史が、同時に人類全体の文明にどのような影響を与えたのかを、豊富な写真や興味深い資料で織りなした一大絵巻とも言うべき内容でした。シリーズを通して語り部を演じたのは、建国間もないイスラエルの国連大使、駐米大使、後に教育文化大臣、外務大臣を務めたアバ・イバン氏で、ケンブリッジ大学卒の学者であった彼の語り口は、簡潔で分かりやすい英語でありながら、格調の高いものでした。

このシリーズは当時5千万人以上が観たとされ、エミー賞やピーボディ賞などを受けました。私自身も深く印象付けられ、コンパニオンブックとして出た同名の著書を買い、折に触れて読んだものです。

その後10年ほどしてロサンゼルスに引っ越し、その地のユダヤ人指導者の数人と親しくなりました。その中の一人で、日露戦争時、日本に資金援助をしたジェーコブ・シフなどが設立した歴史あるユダヤ人団体 American Jewish Committee の西部地区代表ニール・サンドバーグ博士と、このドキュメンタリーの話をしたことがあります。そしてサンドバーグ博士が、日本人のユダヤ人理解を助けたいと、このドキュメンタリーをNHKで放映して貰うためにずいぶん努力したが結局実現しなかったことを、知りました。反ユダヤ的本がベストセラーになり、ホロコースト否定の記事さえ出る日本でこそ、このドキュメンタリーが放映されて欲しいと思っていた私も、その話を聞いてがっかりしたことを覚えています。

それからさらに20年以上が過ぎ、 今では「Heritage: Civilization and the Jews」の全編が Youtube で観られるようになりました。
(以下は第1話ですが、第2話以下もYoutube で検索可能です。)

つい最近では、サイモン・ウィーゼンタール・センターがユネスコと共同で制作したパネル展示「「民、聖書、その発祥の地:ユダヤ人と聖地の3500年にわたる繋がり 」が、東京で開かれました。着任したばかりのイスラエル大使ヤッファ・ベンアリ氏や松浦晃一郎 元ユネスコ事務局長、数人の国会議員も挨拶し、日本とイスラエルの間の理解を深めるこのような教育啓蒙活動の大切さを訴えました。

          
ヤッファ・ベンアリ大使      松浦氏・中山泰秀議員・クーパー師

特筆すべきは、この展示もPBS のドキュメンタリーも、イスラム教の誕生、それがやがて中東全域・北アフリカまで広まり豊かな文化を生み出したこと、その間ユダヤ人が身分は劣位であっても自らの宗教に従って生きることを許されていた歴史を、正確に伝えていることです。

一方、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長はつい先ごろ、中央委員会の演説で、「イスラエルは植民地プロジェクトであり、ユダヤ人とは何の関係もない」と宣言しました。それ以前にも、パレスチナは国連やユネスコに、ユダヤ人と聖地エルサレムの歴史的繋がりを否定し、イスラエル国家の正当性に挑戦する決議案を通させることに、成功しています。これらの決議案の幾つかに日本も賛成票を投じていることが、残念です。

パレスチナ側がイスラエル国家の存在を認めていないこと、ガザを統治するハマスがイスラエルの壊滅を目指す憲章を掲げていることも、日本ではあまり知られていません。

日本政府は最近、和平交渉の仲介役になる用意があることを表明しましたが、古代からの長い歴史と、イスラエル建国後の近代の歴史を正確に踏まえ、誠意ある建設的な役割を果たしてほしいと願います。

コーシャフード

”コーシャ”という言葉を初めて聞いたのは、アメリカに行って間もなく、大学に行き始めた時でした。授業の英語についていくのもおぼつかない頃、誰かがクラスで「Everything is Kosher」と言ったのです。前後の文脈から「全て問題ないよ。」というような意味と理解したのですが、コーシャの本当の意味を知るのはずっと後になってからでした。

その後何年もして、ホロコーストに関するインタビュー集『忘れない勇気』を書く過程で、多くのユダヤ人と親しくなりました。彼らの全員ではありませんでしたが、オーソドックスと呼ばれる人々は、ユダヤ教の決まりを厳格に守り、食事にも多くの制限があることを知りました。食材の種類だけでなく、料理に使う器具も、料理法も全てコーシャでなければならないと聞いて、驚いたのを覚えています。

1997年に本が出版された後、それを支援してくれたサイモン・ウィーゼンタール・センター副所長のエブラハム・クーパー師が日本に来てくれましたが、当時は東京に厳格にコーシャを守るレストランが無くて、彼は食べ物持参の来日でした。今は、高輪に純粋なコーシャレストランChana’s Placeがあるので、クーパー師と安心して食事ができます。

私は3年前に生まれ故郷の仙台に戻ってきましたが、何とそこに、コーシャフードについて大変詳しく、日本の食品会社にコーシャ認定の取り方をアドバイスしている人物がいたのです。(株)ヤマミズラ の門傳章弘社長です。会社のホームページには、コーシャフードについて、大変分かり易い説明が掲載されています。


コーシャ食品をご存知ですか?
コーシャとはもともとは、紀元前の旧約聖書の教えに即した、カシュルートと呼ばれる厳格な「食事規定」がその語源。「コーシャ」とはこの食事規定で「食べて良い食物」のことを意味します。製品の原材料から製造過程まで厳しくチェックされるコーシャ。その判断基準が細かく厳格がゆえに、品質の安全性に信頼が出来るのです。

食べていけない肉類の条件は?
 コーシャで食べて良い肉類は、基本的に草食動物であり且つ反芻動物(胃を二つ以上持つ動物)であることが条件になります。(牛、羊・・・・○ 豚、ウサギ・・・・×)さらに、完全に血抜きされた一定の食肉処理を施された肉のみ食することが出来ます。肉の血液は悪い菌を体内に運ぶと言われており、衛生上理にかなった規定といえます。

魚介類は食べてもいいの?

海や川・湖に住む生き物で、ヒレやウロコのあるものは食べても良いとされていますが、エビや蟹などの甲殻類貝類・たこ・イカなどは食べられません。ウロコが目立たないウナギも食べられません。

コーシャってどうしてそんなに厳しいの?
牛肉と乳製品の”食べ合わせ”を禁じたり、動物性油を禁じたり調理器具や製造過程にも厳しい規定があります。それは厳しい砂漠地帯を生き抜く民族の知恵だったのかもしれません。現代の食生活にも誠実に古の知恵を守るコーシャだからこそ衛生的で、健康的な食品として世界から信頼を得ているのです。

どのような製品がコーシャ認定を必要とするの?
コーシャはあらゆる分野で必要とされています。

・食品全般とその他の関連品
(魚、スナック、オーブン料理など)
・食品工場での原材料
(全ての食用油、大豆に由来する全ての商品、着色料を含む食品など)
・製薬、医療関係
(ビタミン剤、ホメオパシー薬、薬局販売の医療品など)
・ベビーフード関係
(ミルク代用品など)
・化粧品など
・衛生用品、洗剤、掃除用品


認定団体に関しても、詳しい説明があります。

食品がコーシャであると認定する団体は世界に何百もありますが、[OU(Orthodox Union=ニューヨーク本部)]、[OK(Organized Kashrut=ニューヨーク本部)]、[KLBD(Kosher London Beth Din=ロンドン本部)]の3団体が質・規模ともにコーシャ認証で最も権威のある団体です。

この3団体はSuper Kosherと呼ばれ、古くから伝統とルールを守り、清潔、安全、衛生的というコーシャの概念を常に追求しており、認証に携わるラビ(宗教指導者)は化学、薬品、食品などの各分野でのエキスパートです。またこれらの団体では膨大な原材料データをもとに何百人というスタッフが世界中で活躍しています。

ヤマミズラ社はOUとKLBDの日本代理店として、日本の食品会社にコーシャ認定に関するアドバイスをしています。世界の多くの有名食品会社が自社製品にコーシャ認定を受けていますが、最近は日本でも、酒造会社などが積極的に認定を受けるようになってきたそうです。

ヤマミズラ社のカタログから

門傳社長は、歴代のイスラエル大使やヘブライ大学関係者とも親しく、食の文化を通して、日本人とユダヤ人、そしてイスラエルとの交流が深まることを願っているそうです。

門傳社長に、お話を伺いました。

どのような経緯からユダヤ人やイスラエルと付き合うことになったのですか?

70年代に、日本ユダヤ教団でラビを務めておられたマーヴィン・トケイヤー師に出会ったのが、きっかけです。師は、日本の文化や神社などにも大変関心を持たれていて、一緒にいろいろ勉強しました。その後、ヘブライ大学のベン=アミー・シロニー教授も紹介して頂き、仙台周辺の温泉にご案内したりしました。ヘブライ大学から日本研究者が来日した時は、講演をアレンジするお手伝いもしました。

最初はビジネスの関係ではなかったのですね。

違います。日本でアインシュタイン展を開く手伝いをしたりするうちに、イスラエルに信頼できる知り合いが増え、私も信頼して貰えて、それが今のビジネスに結びび着きました。でも、日本とイスラエルの友好に貢献したいという思いは変わらず、今でも、ヘブライ大学で日本語を学ぶ大学生を日本に呼ぶ奨学金を出しています。昨年は、アラブ系イスラエル人学生とユダヤ系イスラエル人学生一人ずつに、奨学金を出しました。

素晴らしいですね。それらの若者がきっと将来、日本とイスラエルの間の友好と理解を深めてくれるでしょう。有難うございました。

 

エルサレムストーンを埋め込んだヤマミズラ社の応接室で