米議会は人間の盾利用のテロリストに挑め

エブラハム・クーパー
サイモン・ウィーゼンタール・センター
Associate Dean, Director of Global Social Action Agenda

戦争が起こると、必ず罪のない一般市民も犠牲になります。しかし、軍が自軍の兵を弾丸から守るために民間人を人間の盾として使うことは、文明国家と国際法(1949年のジュネーブ条約・1977年の追加議定書・1998年の国際刑事裁判所ローマ規程)支持者からすると、戦争犯罪以外の何ものでもありません。

第二次世界大戦時、ヨーロッパやアジアでは、枢軸国が軍人を守り反乱分子を根絶するため、人間の盾を使用したとして非難されました。また、負けると分かりながら日本軍が戦った沖縄戦でも一般市民が激しい戦闘に使われ、10万以上の沖縄市民が亡くなりました。

サッダーム・フセインは、人間の盾の利用レベルを格段に高めました。1990-1991年の湾岸戦争前夜、フセインは、他の国からのロケット攻撃を防ぐため、西側諸国の市民を人間の盾として捕らえました。多くの捕虜たちがフセインと面会しているところを映像として映され、彼への直接攻撃を避けるために移動を共にさせられました。またある者は、軍施設や産業地域の近くに監禁されました。

最近では2016年に、ISISがファルージャにて捕虜たちを人間の盾として利用し始めました。Fox Newsによると、盾として使われたのは何百もの家族、つまり、地域に住む人すべてだったということです。USA Todayは、ISISのテロリストは、何組かの家族を病院に監禁していたとも報道しています。また、イラク政府と国連は、ファルージャでは少なくとも5万人の罪のない市民が捕らわれていたと推定しています。

このような歴史があるからこそ、今回米議会に提出された法案が重要なのです。共和党のテッド・クルーズと民主党のジョー・ドネリー両上院議員は、ヒズボラ・ハマス・パレスチナのイスラム系ジハード、ナイジェリアのボコハラムやその他テロリストグループによる人間の盾使用に対抗するため、最近では本当に珍しくなった超党派による法案を提出しました。

なぜ、今そのような法案が必要なのでしょうか。そして、それがどのような結果をもたらしてくれるのでしょうか。

ここまで例として取り上げてきた人間の盾は、どれも、戦いが激化した際や、抗戦での最後の悪足掻きとして使われてきました。

しかし現在の私たちは、人間の盾の使用を戦略の重要な柱と考える、イランに支持されたテロリストグループとの戦いに挑んでいます。この数か月、ハマスは、ガザとイスラエルの境界線で繰り広げる暴動に子どもたちを使用してきました。イスラエルの兵士が現場へ駆けつけ、子どもたちを見つけたとき、一瞬子どもたちを標的とすることに躊躇います。この罠により、すでにイスラエルの一人の兵士が犠牲になりました。

間もなく退官する米国連大使のニッキー・ヘイリーは、安全保障理事会や国連総会でハマスを非難してきました。しかし、国連加盟国は彼女と異なり、ハマスではなく、いつもイスラエルを非難するのです。これではハマスに、もっと多くの子どもたちを犠牲にさせるだけです。死んだ子供のイメージは、ソーシャル・メディアに使うには最適だからです。

イスラエルとの戦いの最初の頃、ハマスは、市民のインフラを利用してきました。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の学校にミサイルを貯蔵し、イスラエルに向けて発射するための場所として使いました。子供たちが砲弾の餌食となる中、ハマスは、市民の病院を格好の隠れ家として使用しています。そして、パレスチナの子どもたちは、イスラエルへ続くトンネルを掘らされている最中に命を落としているのです。

またユダヤ国家との戦いに備えて、UNRWAの学校で勉強する学生は、夏休みの間、実弾を使った訓練を受けています。やがて殉教者になる時はできるだけ多くのイスラエル兵を道連れにするために。

レバノン南部の状況はさらに深刻です。

ヒズボラは、レバノン南部の各地に10万を超えるロケットと軍の施設を散りばめています。これらの地域のすべてには、一般市民が生活をしています。イスラエル北部を攻撃しながら、レバノンの市民の間での犠牲を増やすことが、戦略です。国境を防衛しようとするイスラエルを非難する国連決議はすでにありますから、ヒズボラにとって、あと必要なのは、罪のない市民たちが犠牲になるストリーミングビデオだけです。

21世紀の今起きているこのような野蛮な出来事を世の中にさらけ出す法案は、歓迎すべきものです。これで国連も、やっと人道的被害を未然に防ぐ行動を始めるか、少なくとも誰がこのような犯罪を犯しているのか気付くのではないでしょうか。

サイモン・ウィーゼンタール・センターは、クルーズとドネリー両議員主導の法案に、民主・共和の両党から支持が増えていることを歓迎します。これだけでも、イスラエルやナイジェリア、そして命の大切さという私たちの価値観を私たちを滅ぼすために利用するテロリストに標的とされた全ての国と、アメリカは共に闘う、と伝える十分なメッセージになるからです。

(日本語訳:杉中亮星)

* クルーズ・ドネリー法案「S. 3257, Sanctioning the Use of Civilians as Defenseless Shields Act」は10月11日上院で可決されました。

先日エルサレムを訪問した杉中亮星さん

日本のBDS運動:日本政府は不支持を明確に

エブラハム・クーパー・徳留絹枝・テッド・ゴーヴァ―

BDS(ボイコット・投資引き上げ・制裁)運動が日本でも起こっています。この組織の日本支部ともいうべきグループは、2020年のオリンピックに向けて日本が世界に手を差し伸べなければならない時に、中東で唯一の民主国家イスラエルを攻撃するという、まるきり反対のキャンペーンを始めました。

BDS運動は、根本的にユダヤ人国家イスラエルの非合法化を目指す国際運動です。署名活動やデモ、時には暴動を通して、個人やビジネスがイスラエルと関わることを止めさせようとします。日本のBDS運動家は以下のような活動をしてきました。

・ホンダイスラエルがイスラエル西岸地区で後援したレースを中止するよう要求

・大丸デパートが開催した「地中海の美食&ワインFair」からイスラエルのゴランワインを除くことを要求。

・日立にエルサレムの市電プロジェクトへの入札を止めるよう要求

・ソフトバンクに、川崎市で開かれたイスラエルセキュリティー見本市のスポンサーから降りるよう要求。

・日本人アーティストにイスラエルでのイベントに参加しないよう要求

日本とイスラエル間の経済活動の拡大に伴い、日本企業がBDSの対象となる事態は増えるでしょう。日本の企業関係者は、この問題にどう対処すべきか指標が必要です。サイモン・ウィーゼンタール・センターは、日本の政治指導者や外務省が、BDS運動に明確に反対すると表明することを願います。

BDSは基本的にイスラエルを罰しようとする活動であり、パレスチナの人々を助ける活動ではありません。パレスチナ人を雇用していたイスラエル系の会社を威嚇して閉鎖させたことさえありました。

日本が、中東で唯一の民主国家イスラエルをボイコットすることは、民主的で自由な社会を標榜してきた戦後日本の価値観にそぐいませんし、近年飛躍的に伸びているイスラエルへの投資とも相反する行為です。

日本のBDS活動家は善良な市民で、パレスチナ支援という崇高で正義の活動に従事していると信じているかもしれません。しかし彼らは、この運動の醜悪で欺瞞的性格を理解していないようです。国際BDS運動は、日本での活動がイスラエルボイコットへの明白な支援の表れだとし、彼ら自身のプロパガンダに使ってきました。

日本の市民がイスラエルの対パレスチナ政策を批判することは自由ですが、BDS運動に参加する意味を正確に知る必要があります。残念なことに、これらの人々は、イスラエルがパレスチナ人を迫害していると休みなく伝える、日本メディアによる長年の偏向報道の犠牲者と言えます。彼らは、米国・英国・ドイツ・フランス・カナダなどの民主国政府が、BDS運動を反ユダヤ的活動と認めていることを、日本の報道から知ることはありません。

さらには、BDS運動が「パレスチナ解放人民戦線(PFLP)」などのテロ組織から支援を受けている事実も、日本では報道されていないでしょう。PFLPは、1972年ロッド空港(現ベングリオン空港)で日本赤軍が26人を殺害した事件の首謀者でした。

BDS運動は差別的で反ユダヤ主義的活動です。日本は、イスラエルとの経済活動を拡大させる一方で、イスラエルの合法性を否定しようとするBDS運動には反対せずにいる、ということはできません

BDS運動が日本に深く根付く前に、日本の指導者はそれを止めるべきです。これまで日本が地道に続けてきたパレスチナへの建設的な支援と、近年安倍首相が率先して築いたイスラエル・日本間の友好が、今後さらなる成果を生み出すためにも。

*エブラハム・クーパー師はサイモン・ウィーゼンタール・センター副館長
*徳留絹枝とテッド・ゴーヴァ―はセンターのアドバイザー

この記事とほぼ同内容の英語版はAsia Timesに掲載されました。